第8回 09年夏の大会展望~奈良編~2009年07月08日

天理ナイン

 奈良大会は9日、近畿のトップを切って開幕する。大会を展望してみた。
 今大会の特徴として、第一に挙げられるのが、シード権を公立4校が取ったということだ。一条郡山法隆寺国際大和広陵 と、近年、力をつけている学校ばかりとはいえ、珍しい。この4校に天理智弁学園の私学2強に、心境著しい奈良大付が挑む形となるが、さて、どうなっていくのだろう。

 まず、一条 のいる第一ブロックは、開幕試合で戦う香芝橿原学院の戦いが見ものだ。というのも、この対戦は両監督に注目してもらいたい。

香芝・安井浩監督は、広陵高時代にコーチとして、高田高時代に監督として春の選抜の舞台を踏んでいる。それだけでなく、過去、公立校を4度夏の決勝に導いている名監督なのだ。バントエンドランなど、奇抜な采配を得意とし、固定観念に縛られない戦略で、対戦校を混乱に陥れる。
 それに対する橿原学院・竹村和泰監督は、現役時代2度の甲子園出場。高校3年春にはベスト8に進出し、横浜・松坂大輔(レッドソックス)と投げ合っている。この甲子園を知る者同士、しかも、ベテランと若手の対決は非常に興味深いものが。この勝者が、シード校の一条と対戦するのだから、面白みは増すばかりだ。
 このほかでは、昨夏準優勝の奈良大付と、昨年秋県大会で準優勝した桜井もいる。奈良大付はエースの松田が大黒柱。昨年秋は智弁学園を完封したのに続いて、この春は天理を完封した。強豪が最も恐れる投手と言っていいだろう。そして、田中監督が鍛え上げる守備力も奈良大付の持つ強さだ。昨夏は、あの厳しい戦いの中、ノーエラーだった。
 桜井は監督を務める森島監督は前任の斑鳩時代に、2度のセンバツに導いている。守備をベースとした堅い野球を実践するが、何より、自身が天理高校出身とあって、どんな相手にも恐れをなさないところが強みである。チームも、野球よりも日常生活に力を入れ、ゴミ拾い、トイレ掃除と人間力を高めている。武士道のような、精神の強さを感じるチームだ。実績でいえば、奈良大付がややリードだが、若い田中監督と森島監督、実に面白い戦いだ。



法隆寺国際vs橿原学院(09春季大会)

 法隆寺国際のいるブロックにはセンバツ出場の天理、強豪・高田商などが入った。天理の初戦は橿原と、これも好チームだ。00年のセンバツ出場校であり、部員数は毎年、県内上位クラスだ。指揮を執る坂口昭彦監督も、現役時代甲子園ベスト8の実績がある。守備をベースとしたチーム作りはもはや伝統になりつつある。大会序盤で波乱を起こし、奈良大会を混乱に陥れられるか。

 高田商は例年に比べて、派手さはないが、そこが怖いところだ。上位から下位まで穴がなく、俊足好打者を揃える。いわば、いろんな攻撃が仕掛けられるのだ。投手は松村・川上の二枚の左を軸として、乗り切る。天理に2度決勝で敗れた過去を持つだけに、天理と同じブロックに入ったのは興味深い。

 法隆寺国際は変貌自在な投球が売りの渡瀬を中心に堅い守備力に定評がある。それも、しっかりとした日常生活を重視したメンタルの強さからきている。打線がどこまで厚くなるかが課題だが、シード校として自信を持って立ち向かえそうだ。法隆寺国際は06年の決勝で、天理にサヨナラ負け。ここ近年で、もっとも記憶に残る決勝戦を演じた。そうした高田商と同じような運命をたどるだけに、天理のいるところに、チームがそろったのが楽しみだ。
 また、統合校として再出発を図る奈良朱雀も楽しみだ。昨秋までは別々だったチームが、一緒になってどんな化学変化を起こすのか、このブロックのダークホース的存在と言っていい。
 一方の天理は、センバツ出場も1回戦敗退。不調を心配する声もあったが、ここへきて上り調子。下級生が台頭して、それに刺激された上級生も力を発揮。原田・西浦の二遊間、徳山・安田と勝負強い打者が揃う。実力的にはNO1といって間違いない。だが、序盤に弱さを見せる過去があっただけに、その点、成長を確認したいところだ。



一条vs高取国際(09春季大会)

 郡山のいるブロックは、最激戦区。就任47年目を迎える郡山の森本達幸監督がこの夏を最後に勇退が決まっている。その砦に、高田智弁学園五條奈良二階堂ら実力校が集まったことは、運命的でもある。高田は昨秋、天理を苦しめたことでも有名。攻守にまとまりがあり、一気に上位進出の可能性も。
 3連覇を狙う智弁学園は前評判こそ、昨年ほどではないが、戦力が整ってきた。1年夏からレギュラーの稲森がチームを引っ張り、辻ら昨夏メンバー、この春から台頭した下級生も、戦力として期待できる。五條は今大会注目の右腕・澤口が軸になり、打線も澤口と西尾ら強打者がそろっている。

昨夏のベスト4登美ヶ丘と昨秋ベスト4の奈良の対決も面白い。夏に部類の強さを発揮する登美ヶ丘は、ベテランの北野監督の際はに注目したい。ハイレベルな位置で文武両道を実践する奈良は、安定している。中でも遊撃手の藤原は今大会屈指の遊撃手だ。
 二階堂は能力の高い選手がいる。控え投手で主軸を務める浦は上背こそないが、身体能力が高い。

 大和広陵のいるブロックは、この春のベスト8が4校もいる。畝傍高取国際関西中央大和広陵だ。大和広陵は、関西中央奈良北の勝者との対戦。奈良北も攻守にバランスがとれているが、関西中央の個性が勝るか、そこが見どころである。中堅手で主軸の箕輪は将来が楽しみな選手だ。選手宣誓を務める石田主将のいる畝傍もタレントはそろっている。赤木を中心とした複数の投手と、豪快に振りぬいていく打線が特徴である。
 また、このブロックのもうひとつの特徴として、全力プレーを心掛けるチームがいること。その象徴は王寺工高取国際ら。そのひたむきなプレーが夏の大会で継続できれば、他校にとっては脅威になるだろう。現場復帰して久々の夏を迎える生島監督率いる磯城野も注目したい。



(文=氏原英明


春季大会結果
春季大会【奈良】優勝一条
準優勝郡山
ベスト4大和広陵 、法隆寺国際  
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プロフィール

氏原英明
氏原 英明
  • 生年月日:1977年
  • 出身地:ブラジルサンパウロで生まれる
  • ■ 高校時代から記者志望で、新聞記者になるのが将来の夢だった。
  • ■ アトランタ五輪後に、スポーツライターに方向転換。
  • ■ 大学を卒業後、地元新聞社に所属。
  • ■ その後スポーツ記者として、インターハイなど全国大会の取材も経験させてもらい、数々の署名記事を書く。
  • ■ 03年に退社。フリー活動を開始。

    『週間ベースボール』、『ベースボールクリニック』(ベースボールマガジン社)、『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)『ホームラン』(廣済堂出版)、『Number』(文藝春秋)、『Sportiva』(集英社)、『高校野球ドットコム』『ベースボールファン』などに寄稿。フリーライターとしての地位を固める。

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