2010年07月23日 明治神宮球場

修徳vs都立紅葉川

2010年夏の大会 第92回東西東京大会 準々決勝

(都立紅葉川ナイン)

大健闘の紅葉川、さまざまな思いを残して8強で散る

 ここまで、まさかの快進撃を続けてきた伏兵の都立紅葉川。投手戦の1-0あり、2ケタ得点の打撃戦ありでさまざまなスタイルの試合をこなしながらその都度自分たちも力をつけてきた。この春、都立調布南から異動してきた田河清司監督が率いて3カ月半、選手にも監督にも戸惑いや遠慮のある中から始まったが、田河監督は前任の才野秀樹監督(現・修桜館)が作り上げたベースの守りの野球に打力アップを目指して選手たちの自主的な朝練習などにつきあいながらチーム力を強化してきた。

田河監督は都立武蔵丘から都立日比谷、調布南と異動しながら、赴任先ではそれぞれで持ち前の明るさでもある“のせ力”を発揮して、選手たちをその気にさせながら好チームを作り上げることで定評のある人だ。都立紅葉川でも、「お前たちは幸せだぞ。二人の監督からそれぞれの野球を勉強させて貰っているんだ。そんなチームはお前たちだけなんだから」と言いながら、選手たちをその気にさせてきた成果ともいえる。

そんなチームをスタンドでは才野前監督が感慨深そうに観戦していた。「本当に、ここまでよく来てくれたと思います。ご存知のようにグラウンドも狭い、あの環境の中でよく頑張って来てくれました」と、東京大会では準々決勝になって初めて選手名が電光掲示板に記されるのだが、教え子の名前が出ている都立紅葉川のボードを熱いまなざしで見つめていた。

中学校の講師をしながら、高校野球の指導がしたくて何度も高校の採用試験にチャレンジし続けてきた苦労人だが、ようやく採用となって最初の赴任校が都立紅葉川だった。当時はほとんど甲子園を目指す姿勢すら感じられなかった弱小野球部を、それこそユニホームの着方から荷物の置き方や球場での次試合の待ち方、球場への入り方など基本以前のことを教えながら、トイレには心得を貼り出したり、一つひとつを自分が経験してきた拓大紅陵での経験を踏まえて、まず、やれることからやっていこうという姿勢で野球部らしく教え育ててきたチームだ。思い半ばでの異動に未練もあっただろうが、結果的にはこの都立紅葉川は二人の監督のいいエッセンスを組み取って今回のベスト8という結果を得たといってもいいであろう。

 第一シードの修徳に力及ばず、7回コールドゲームという形で終わってしまった試合後、田河監督は、「ちょっとスミマセン」とことわって、洗面所で汗と一緒に涙も洗い流しながら顔を洗った。そして、「うーん、やっぱり悔しいなぁ。スクイズで取った先制点は、あの子(六番野中)は一番バントが上手い子なので、やれると思いました。1点先制できたことはよかったのですが、その裏、相手のエンドランを決められたことが、その後の展開を変えました…。結果的には打たれてしまったのですが、あそこはもっときちんと外す指示を出しておくべきでした」と、先制した直後の2回にひっくり返されたイニングを悔やんだ。

 それでも、菊入、三ツ俣、鳥海と続く強力な修徳のクリーンアップに対して、臆することなく堂々と投げていった野澤投手も立派だった。そして、50歳を越してなお、悔し涙を流せるエネルギーのある田河監督も少しうらやましく思ってしまった。

 修徳はこれで、準優勝した07年以来のベスト4進出である。鳥山泰孝監督にとっては、その年は赴任してすぐに前任監督が作り上げたものが、学校の事情で監督不在となってしまったチームを任されたものだった。その後の低迷もあって、名門修徳としても苦しい時期もあったが、今年の3年生たちは鳥山監督とともに歩んできた選手たちでもある。鳥山監督としても手塩にかけてきたという思いは強い。
 はからずも、両校監督たちのさまざまな思いが交錯した試合でもあった。そんな監督たちの熱い思いを見つめていくのもまた、高校野球の楽しみでもあるといっていい。

(文=手束 仁

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